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■ 薄明りの江戸川

 30年来の友人から、喪中の葉書が届いた。
今年の夏、彼の父親が他界された事が記されていた。

 普通ならば、年賀状の送付を差し控えるだけでもあるが、
そのままにしてはいけない、事情があった。

 今から20年程前、私事の祝いの際に、当時としては結構な金額の
祝儀袋をいただいていたからだ。

 それから20年、お返しをしようにも、彼は独身を謳歌したままなので、
全くもって義理を果たせないでいた。 

 以前、彼が別の友達に懇願され、お金を貸したが、返って来ないと
静かに嘆いていた事を覚えている。自分も何故だか微妙な気分になった。

 とにかく彼に電話を入れて、お焼香させていただく事を申し入れた。 
その際の香典により、当時受けた義理の半分でもお返ししなくてはならない。
少し警戒されて丁重に断られたが、2度目の連絡で受けてくれた。

 当日、彼の最寄り駅である、京成江戸川駅で待ち合わせをした。
静かな駅を出て、江戸川堤防を横目にしながら歩いて彼の自宅へ向かった。

 遠目に彼の居宅が見えると、ぼんやりと薄明りが灯っている。
きっと、既に打合せ済みで、彼のお母さんが待っている事が想像出来た。
 
 1本のお焼香が済むと、お母さんがすすり泣いていたことを
目の当りにしてしまい、不覚だったが、もらい泣きをしてしまった。

 その後、彼とバスに乗ってJR小岩駅に出て、久しぶりに酒を飲んだ。
ようやく義理の半分を果たせた事で、少し安堵したような気持ちになったが
残りの事については、考えたくはなくなった。

借方があったままでもよいのだ、そう思えるようになってきた。

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